すべての始まりは、鳥取県中部・北栄町のらっきょう農家さんとの出会いでした。
私たちは鳥取県西部を拠点に活動していますが、ご縁があって北栄町のらっきょう農家の方々と交流する機会をいただきました。
その中で、「毎年、多くのらっきょうを廃棄している」という話を伺ったのです。
私は大きな衝撃を受けました。
鳥取を代表する特産品であるらっきょう。その一つひとつには、生産者の皆さまの努力と想いが込められています。
しかし、品質に問題がなくても、規格や流通の事情によって販売できず、行き場を失ってしまうことがあるのです。
「これほど価値のあるものを、何とか活かすことはできないだろうか。」
その思いが、私たちの挑戦の出発点となりました。
さらに調べを進めると、この問題はらっきょうだけではありませんでした。
りんご、梨、柿、にんにく、梅など、多くの農産物が品質に問題がないにもかかわらず、規格や流通の事情によって出荷できず、廃棄されていることを知りました。
北栄町へ何度も足を運ぶ中で、生産者の皆さまの思いや苦労に触れ、フードロス問題をより身近な課題として考えるようになりました。
そんな中、らっきょう農家の皆さまとのご縁から、鳥取大学、鳥取県産業技術センター、鳥取県園芸試験場の研究者の方々と交流する機会にも恵まれました。
その中で中心となって研究開発に取り組んだのが、元教員であり、現在は事務長・研究開発部長を務める伊達秀幸です。
伊達は教育現場で多くの人と関わる中で、障害のある方々の福祉や社会参加に関心を持ち続けてきました。
そして、地域の課題解決に貢献したいとの思いから、未利用農産物の活用に取り組むようになりました。
黒らっきょうの生産性向上に関する研究から得た知見をもとに試行錯誤を重ねた結果、黒らっきょうをエキス化する製法の開発に成功しました。
さらに、その製法はらっきょうだけでなく、りんご、梨、柿、にんにく、梅など、さまざまな農産物にも応用できる可能性を持つことが分かりました。
私たちの活動は、教育現場で培った人を支える視点と、研究機関との交流から得た技術的な知見、その両方によって支えられています。
私たちはここに、フードロス問題解決の大きな可能性を見出しました。
しかし、この取り組みを進める中で、私たちはもう一つの課題と向き合うことになります。
それは、障害のある方々の働く場や活躍の場の不足です。
教育現場で多くの生徒たちと接してきた私たちは、障害のある方々の中にも素晴らしい能力や可能性があることを知っています。
しかし、その力を発揮する機会は決して十分とは言えません。
そして私たちは気付きました。
活かされない農産物と、活かされない人の力。
この二つの課題は、本質的によく似ています。
農産物に価値がないわけではありません。
障害のある方々に価値がないわけでもありません。
本来持っている価値が、十分に活かされていないだけなのです。
だからこそ私たちは、「価値を見つけること」「価値を磨くこと」「価値を社会へ届けること」をマサムネの使命にしました。
黒らっきょうエキスの開発は、その象徴ともいえる取り組みです。
行き場を失ったらっきょうに新たな価値を生み出し、その製造や販売に障害のある方々が関わることで、新たな働く場や生きがいを創出することができます。
一つの取り組みが、人を活かし、資源を活かし、地域を活かす。
私たちはそこに大きな可能性を感じています。
法人名である「マサムネ」は、理事長の姓である伊達にちなみ名付けました。
しかし同時に、「磨くことで本来の価値を引き出す」という私たちの願いも込められています。
農産物も、人も、地域も、本来は大きな可能性を持っています。
私たちは、その可能性に光を当てたい。
見過ごされてきた価値を見つけたい。
そして、それを未来へつなげたい。
マサムネが目指しているのは、単なる福祉事業でも、単なるフードロス対策でもありません。
誰もが役割を持ち、誰もが必要とされ、地域の資源が大切に活かされる社会です。
私たちは価値のないものを扱っているのではありません。
本来の価値がまだ見出されていないものを扱っています。
人も、農産物も、地域も。
その可能性を信じ、未来へつなげていくことがマサムネの使命です。
「もったいない」を「ありがとう」に変える。
私たちは、その挑戦を鳥取から発信してまいります。
特定非営利活動法人マサムネ
理事長 伊達 なつ子